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試作開発

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トランジスタブースター(5)回路のモディファイ

前回まではオリジナルのLPB-1の回路を元に解析してきましたが、今回からはここに手を加えていきます。ビンテージのLPB-1はフットスイッチ無し、電池のみ対応で繋ぐギターやエフェクターに大きく左右されるという癖の強いエフェクターです。それはそれでこのエフェクターの個性ですし良いのですが、音楽ジャンルも多様化した現代では使いにくいことも多くなりそうです。よって今回は「オリジナルのLPB-1よりほんの少しモダンで使いやすい」をコンセプトに製作していくことにします。以下が今回追加する機能です。

  • フットスイッチ対応
  • LED追加
  • 電源部フィルタリング追加
  • 逆接続保護
  • 入力カップリングコンデンサ切り替えスイッチの追加

トランジスタ

まずは使用するトランジスタを決めます。前回の記事でわかったように、hFEは高いほうが癖の少ない使いやすい性能にできるので、手持ちの中で一番hFEの高い2SC1815のBLランクを使用します。hFE=約540で前回登場した式に当てはめると、入力インピーダンス=33kΩ、カットオフ周波数=48Hzになります。

フットスイッチ対応

今回エフェクトの切り替えはトゥルーバイパス方式で行います。部品点数が少なくてシンプルなのが利点ですが、切り替え時にポップノイズが出ることがあります。エフェクターやアンプで増幅されるので耳障りですし、機材にも悪影響です。対策としてプルダウン抵抗を入力に足します。当然入力のインピーダンスにも影響を与えますが、値の大きい抵抗を使えばほとんど影響は出ません。具体的には

\[ Z_{in} = 33k || 1M \approx 32k \]

となります。

LED追加

今回は手持ちの高輝度LEDを使います。ただ高輝度すぎて眩しいので電流制限抵抗に100kΩの抵抗を使い明るさを抑えます。ここは個人の好みが分かれるところですが、個人的にはオンオフが分かりさえすれば暗めが使いやすいと感じます。

電源部フィルタリング追加

オリジナルのLPB-1は電池のみ対応だったためか、電源部のフィルタリングがありません。電源アダプターでも使用することを考え、デカップリング・コンデンサ(バイパスコンデンサ)を入れてノイズ除去を行います。ここでは定番の100uFのアルミ電解+0.1uFのセラミックコンデンサを追加します。また、その前に抵抗を追加してRCローパスフィルタを構成することで更に効果的になります。今回は100Ωの抵抗を電源に直列に入れますが、副作用で電圧降下が起きます。LPB-1の消費電流は1mAほどと考えると、\(100Ω \cdot 1mA=0.1V\)の降下がありますが、許容範囲とします。

逆接続保護

電源アダプターを使用できるようにすると問題になるのが逆接続です。エフェクターの電源はほとんどのものが9Vセンターマイナスという規格ですが、世の中には極性が逆の電源アダプターも多く存在します。間違って極性が違うものを差してしまうとエフェクターが壊れる可能性があるため、逆接続保護を行う必要性があります。ダイオードを使った保護の方法には並列と直列の2つがありますが、今回はより強力に保護できる直列型を採用します。ここでも副作用で電圧降下が起きるので、降下量の小さいショットキーバリアダイオードを使います。

入力カップリングコンデンサ切り替え

第一回の記事でも紹介しましたが、LPB-1を元にしたエフェクターにScreaming Birdがあります。こちらはLPB-1とは違い高音域をより増幅するトレブルブースターですが、LPB-1との違いは入出力部のコンデンサだけです。今回は影響の大きい入力部のコンデンサを切り替えることで、カットオフ周波数を変更できるようにします。一番容量の低いコンデンサを常に通る形にして、容量の大きいものを並列に追加することによって全体の容量を切り替える方式です。コンデンサは並列にすることによって容量が足し算されるため、on-off-onのスイッチを使うことで、最小の容量、最小+A、最小+Bの3通りを切り替える事ができるようになります。

Screaming Bird参考回路図
Screaming Bird参考回路図。C1とC2の容量がLPB-1よりも小さい。

コンデンサの値とカットオフ周波数

今回は3wayのスイッチを使うので、

  1. ベースにも対応したフルレンジモード
  2. トレブルブースター(Screaming Bird)モード
  3. LPB-1オリジナルモード

の3つを切り替えられるものとします。

トレブルブースター

まずトレブルブースターについて考えます。こちらはScreaming Birdの回路を参考にして、近い値の0.0022uF(2.2nF)にしてみましょう。入力インピーダンスが32kのときのカットオフ周波数は

\[ f_c = \frac{1}{2 \pi \cdot 32k \cdot 0.0022 \mu F} \approx 2261Hz \]

で、中低音がしっかりとカットされ、高音域だけが通るようになっています。

LPB-1オリジナル

次にオリジナルLPB-1のモードですが、常に0.0022uFのコンデンサを通るところに0.1uFのコンデンサを並列に追加します。すると全体の容量が0.0022uF+0.1uF=0.1022uFとなります。

\[ f_c = \frac{1}{2 \pi \cdot 32k \cdot 0.1022 \mu F} \approx 49Hz \]

フルレンジブースター

次にフルレンジですが、なるべく大きな値にしたいので1uFで計算してみます。すると

\[ f_c = \frac{1}{2 \pi \cdot 32k \cdot 1 \mu F} \approx 5Hz \]

カットオフは約5Hzと人間の可聴域である20Hzをかなり下回る値が出ました。5弦ベースの最低音が約31Hzですが、カットオフが5Hzであれば損失は-0.1dBに抑えられます。

電圧降下の測定

ブレッドボードで組んだうえで電圧降下を測定してみます。今回は電池ではなく9Vの電源アダプターを使用しました。9Vと言いつつ無負荷時には9.37V出ています。今回の回路を組んでみると、逆接続保護のダイオード通過で9.19V(-0.18V)、100Ω抵抗を通過後は9.14V(-0.05V)、全体で0.23Vの低下でした。

回路図

上記を(フットスイッチとLED関連以外)すべて追加した回路図がこちらです。パーツ類は少し増えていますが、全体としては依然シンプルなブースターですね。

トランジスタブースター改回路図
トランジスタブースター改回路図。フットスイッチとLEDは省略。

次回

次回はケースに組み込んでトランジスタブースターを完成させていきます。はたして、「オリジナルのLPB-1よりほんの少しモダンで使いやすい」というコンセプトは達成できたのでしょうか。