Electra Distortionとハードクリッピング(1)その歴史
エレクトラ MPCシリーズ
1970年代、アメリカのミズーリ州に拠点を構えていたセントルイス・ミュージック社は、
当時エレクトラ(Electra)というギターブランドを展開していました。
日本の楽器製造業者、マツモクなどに委託してギターを製造し、アメリカ国内で販売。
ブランド名のエレクトラは、Electricの響きに由来するようにも思われます。
ちなみに、ギリシャ神話に登場する王女の名前もエレクトラで、ミケーネの王アガメムノンと王妃クリュタイムネストラの娘だそうです。
関係あるのかは分かりませんが、神話の王女の名前と同じなのは、何だかかっこいいですね。
エレクトラでは、レスポールタイプやストラトタイプなどのコピーモデルに加え、
フェニックス(Phoenix)やポインティ(Pointy)といったオリジナルモデルもラインナップされていましたが、
革新性を発揮したのが、今回、主人公となるMPCモデルと呼ばれるシリーズです。
エフェクター内蔵ギターの開発
1976年に発表されたMPCシリーズ。
MPCはModuler Powered Circuitの頭文字をとったもので、和訳すると「モジュール駆動回路」でしょうか。
タバコの箱ほどの大きさのケースに詰め込まれたエフェクター回路で、カートリッジのような使い方をしました。
MPCシリーズのギターには背面に大きなスペースが設けられていて、
カートリッジを差し込むことでギターにエフェクターの機能を追加することができました。
つまり、MPCシリーズは交換式の内蔵型エフェクター機能を備えたギターだったのです。
エレクトラやMPCシリーズについては、下記のサイトでさらに詳しく記載されています。
https://www.electraguitar.com/pages/history(復活した現行エレクトラのサイト)
足元にペダルとしてエフェクターを置くのが当たり前だった時代に、
この取り替え可能な内蔵型エフェクターは、画期的なアイデアとして業界に驚きをもたらしました。
MPCには、フェイズシフター、ダイナミック・ファズ、オーバードライブ、オートワウ、コンプレッサーなど、12種類が用意されていたそうです。
こちらの海外サイトでは、12のMPCの音声ファイルを掲載していて、試聴できます。
http://www.rivercityamps.com/electra/modules.php
また、YouTubeに掲載されているこちらの動画では、実際にMPCシリーズのギターの演奏を見ることができます。
ギターに2つ差し込めたそうなので、バリエーションは豊富に組み合わせられたと思います。
そして、今回取り上げるエレクトラ・ディストーションは、まさにこのMPCに組み込まれていた歪み回路です。
極限までシンプルだった回路
では、どんな回路だったのか。
話を先食いしない程度に紹介すると、
トランジスタ1石とダイオード2本で歪みを生み出す、非常にシンプルな回路でした。
タバコの箱ほどのカートリッジに収めるので、自然とそうなったのかもしれませんが、
トランジスタで増幅させた音をダイオードでクリッピングして整形する、というものすごく分かりやすい回路です。
パーツの数は、抵抗が3つ、コンデンサ2つ、トランジスタ1石、ダイオード2本。これだけ。
どの抵抗やコンデンサ、トランジスタ、ダイオードを使うかによって、パーツの個性が大きく音に反映される回路になっています。
自作愛好者たちによって新たな潮流が
その後、エレクトラはブランドとしては姿を消しましたが、
1990年代半ばに、ディストーション回路が脚光を浴びることとなりました。
そのきっかけは、「チューブスクリーマーにそっくりな音が出る」と、
MPCの回路のモディファイを公開したネット記事が公開されたことが、きっかけだったみたいです。
これ以降、回路はアマチュアたちの試行錯誤によって様々にモディファイされ、
その流れはやがてブティックペダルと呼ばれる、高級エフェクターの誕生にもつながっていきます。
次回以降、エレクトラ・ディストーションの回路を分析し、これをベースにオリジナルエフェクターの開発を進めます。
研究員M